東洋大学准教授 渡辺 道代 先生に家族支援について教えて頂きました。

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今回の対談は当社、西村の母校、東洋大学の准教授である渡辺 道代 先生に家族支援について教えて頂きました。

所属 ライフデザイン学部生活支援学科
専門分野 社会福祉学
著書 介護の質「2050年問題」への挑戦(共著) [クリエイツかもがわ] 介護疲れを軽くする方法 家族を介護するすべての人へ [河出書房新社]
研修テーマ 介護者支援
家族支援
ソーシャルワーク

インタビュー

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渡辺 道代 東洋大学ライフデザイン学部生活支援学科

経歴
東洋大学准教授
NPO法人 介護者サポートネットワークセンター アラジン 副理事長

かいごのじかんスタッフ
かいごのじかん

渡辺先生が取り組んでいること

を教えてもらっていいですか?

渡辺 道代 准教授
渡辺先生
私がやっているのは介護というよりも社会福祉全般ソーシャルワークというのがベースです。簡単に言うと「家族支援」をやっています。厳密に言うと家族支援=介護ではないんですよね。介護に伴って家族の問題が出てきて、そこをどうサポートするかがテーマなので、ちょっと違います。介護をベースにやっている先生方は介護の問題があって、その周辺に家族の問題があると思いますし、私は家族支援をベースにしていて、高齢や障がい関係なく、問題を抱えている方の家族に対してどうアプローチするかを主軸にしています。日本の介護は多くが家族でやっています。家族ができない場合に施設に入所するので、介護度が軽度や中程度では訪問や通所のサービスを利用しながらも、多くは家族がやっています。ちょっとぐらいボケちゃっても普通に家族と暮らしていますよね。中・重度になってくると介護施設に入所するケースが多くなってきます。多くのケースで家族がまず一番に介護をしています。

かいごのじかんスタッフ
かいごのじかん

家族内介護で大変なこと

を教えて下さい。

渡辺 道代 准教授
渡辺先生
介護はハッキリ言って何年かかるか分からないです。調査では介護の平均期間は7〜10年、最短でも5年といわれているようです。しかしケースバイケースで短くて1ヵ月で亡くなる方もいるし、20年も30年もかかる事もあって子育てなどとは違って期間が見えないところが精神的にきついですね。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000114063.pdf
厚生労働省健康局 健康課 平成27年2月19日
平均寿命から健康寿命を引いた年数を介護期間と定義すると
男性:9.13年 女性:12.68年
介護期間

「意外と長丁場なんだよ」っていうのが介護。

例えば認知症になっても軽い状態から本当に重度で亡くなるまで大体が5〜10年だとすると、その間は軽度の手がかからない時から重度の手がかかるところまでを含め、相当長いスパンでやらなきゃいけないということです。ご家族は介護のために仕事はある程度制限しないといけないし、でも収入がなくなるとそれこそ介護も出来なくなってしまうという状態になってしまいます。ある意味家族で暮らしているから当たり前ではあるけれど、介護が中程度から重度になると相当時間もお金もとられるので、そこの調整も必要になってきます。

家族支援は、家族はお互いに助け合うのが当たり前で暮らしている訳なので、一緒に助け合って暮らすということ自体は問題ではありません。しかし介護の程度が重くなってくると、どうしても時間が取られるのでご家族の方が仕事を辞める(介護離職)が多くなります。家族であるがために経済的なところ、時間的な問題が見えにくくなる。自分たちで気付かないうちに抱え込む傾向があるので、外から相談に乗ったり、精神的にサポートしたりするのが家族支援の領域になってきます。

かいごのじかんスタッフ
かいごのじかん
なるほど。そうしましたら

家族支援について

詳しく教えてください。

渡辺 道代 准教授
渡辺先生
介護に携わっている家族を集めて話し合いの場(ピアサポートグループ)を提供したりしています。女性であれば介護の困りごとや愚痴を聞き合います。男性介護者ですと多くは奥さんとかお母さんを介護するのですが、男性にとっては、今まで自分の世話してくれていた人を看ることになることが多いのです。そうすると洗濯の仕方も分からない、買い物の仕方も分からない、通帳どこにあるの?など悩みの種類が違ってきます。また男性介護者だと飲みに行く仲間とかもいなくなってしまうので仲間作りからですね。親父(おやじ)の会みたいなものです。介護ってわりと閉鎖的なところがあるので、ちゃんと相談すればいろんな手だてが出来るけれど、自分たちで抱えてしまうと最悪なケースに至ってしまう事があります。介護心中を調べている先生もいらっしゃいますが、新聞記事だけでも月に2~3件は必ず出てきますよね。
本当に悩んでいるけれど外に相談できなくて、こもった末に最悪の選択になってしまう事があります。そうしなくても様々な形でサービスや施設利用につながることもできるし、介護者が精神的・経済的に行き詰まっていている状況がわかれば、虐待や事件が起こる前にさすがに行政や相談機関も動いてくれます。現状どうなのか、何に困っているのかを行政や相談機関に行ってうまく説明できれば、いろいろな形で支援につながるのです。

相談できるNPOや団体はかなり増えてきたので、まずは相談してほしいですね。じゃないと、本当に大変なところをそのままスルーしていよいよ危険な状態にまでなってしまいますから。介護で深刻なケースは、介護が始まって悩みを抱えながらどんどん鬱っぽくなって、疲れて悩み抜いて倒れたり、事件になったりします。どこかで支えられるところがあったらとすごく思います。

かいごのじかんスタッフ
かいごのじかん
希望してすぐ施設に入れるわけじゃないんですね。

待機者問題について

教えてもらえますか?

渡辺 道代 准教授
渡辺先生
待機者問題っていうのは前から議論されています。施設入所待機者(特別養護老人ホーム等)の方が大体新規入所者の2倍位あるんですよ。すぐに入るつもりはないけどいずれ必要かもしれないから入りたい方もいて申込する人もいます。すぐには入れないので、緊急性がある人は有料老人ホームや老人保健施設を使っている人もいます。特別養護老人ホームの入所は点数をつけて優先順位を判断されています。介護者がストレスで等で虐待が考えられる場合は対応を考えてくれる場合もあるので、地域包括支援センターなどに積極的に相談するべきです。
かいごのじかんスタッフ
かいごのじかん
家族の介護って昔はよくある話で
こんなに大変なイメージはなかったんですけど、

日本の環境は昔とどう変わった

のでしょうか?

渡辺 道代 准教授
渡辺先生
そうですね。介護保険が始まって約20年ですが、前よりは介護制度そのものがだいぶ整ってきたと感じます。昔は全て家族介護でしたが、今は介護者は実子介護の世界なんです。要するにお嫁さんが義理のご両親のお世話をするのが減ってしまったんです。お嫁さんである奥さんがご主人の方のお義父さん、お義母さんの世話をするよりも、息子もであるご主人自身が介護する。「自分の親の事が気になるんだったら自分でやってね。」という時代になり、明らかに実子介護が増えています。
そのため、中高年の息子さんが仕事辞めて介護に携わるケースも多くあります。施設に預けるとなると、ご本人が経済的に余裕がない場合は子どもが負担することになります。
そうすると、介護している側がなんらかの収入がないといけないですよね。みんながみんなそんなに財産や能力がある訳ではありません。
かいごのじかんスタッフ
かいごのじかん
少しでも家族が介護で苦しむことは減ってほしいですね。
その取り組みとして、渡辺先生が副理事を努めていらっしゃる

NPO法人アラジン

について教えてもらえますか?

渡辺 道代 准教授
渡辺先生
介護で人生や仕事をあきらめない社会を実現するための介護者サポート活動をしています。介護者サポートは行政とタイアップして広報し、地域包括支援センターと連携して気になる人を紹介してもらいます。できる限りサポートグループにつながるように行っています。地域によっては口コミから情報から繋がるケースもあるのですけど、そういうケースはなかなか少なくて、ネット情報・発信、広報、相談機関との連携で繋いでいるところです。
アラジンは、集いやピアサポートのコミュニケーションを重要視しています。サポートグループは面のタイプの会と、点のタイプの会があります。
まず面のタイプというのは、行政地域で広報などを使って「こういう会やります」と宣伝します。東京でいえば23区内でほぼ面のタイプでサポートグループを行っています。
点のタイプでは、先ほど言ったような男性介護者や若い30~40歳代の娘介護者などの介護者などお一人お一人を対象にサポートを行います。介護者全体は50歳代~60歳代の女性がメインなんです。でも20歳代〜40歳代の方が介護を担うというのもあって、そういう方はダブルケアラーになっている場合が多いです。
つまり彼女たちは子育てもしつつ、おじいちゃん、おばあちゃんのお世話をするという感じですね。40歳代くらいで仕事をしながら介護してる方の場合だと、50~60代の介護者人達と話が合わないんです。若い介護者の場合、自分で小さな会社起業されてたりとか、自分もアクティブに社会に関わりたいけれど介護もちゃんとやりたいと考えている方もいます。介護でも、実のお父さんお母さんを見る熱意と、義理のお母さんをみるのでは熱意が違うんですよ。

介護者は年齢が若いほど介護者数は少なくなりますが、深刻な問題も抱えています。ヤングケアラーという未成年の介護者の存在ですね。ひとり親だと子ども相当介護の負担がかかることがあります。深刻な事例も色々あって、高校卒業したけど「お父さん、お母さんが仕事するから、学校卒業したら就職せずにおじいちゃん・おばあちゃんの面倒みてくれ」と親に言われたという例もあります。埼玉県では全国に先駆けて2019年に県で介護者条例を作りました。

かいごのじかんスタッフ
かいごのじかん
なるほど。そういう困ったときって、
個人でいくより、NPO法人を通した方が行政は動いてもらえるのでしょうか?
渡辺 道代 准教授
渡辺先生
介護者への相談に付き添いなどのサポートしているNPO法人もあります。
介護者支援系のNPOって実はとっても少ないです。一緒に窓口までサポートするNPOもありますが、あくまでも相談やアドバイスをすることが多いと思います。困っていたらいろいろな支援は出してくれるので、まずは相談すると良いと思います。
かいごのじかんスタッフ
かいごのじかん

NPO法人としてアラジンが長く続いている理由

はどこにあるのでしょうか?

渡辺 道代 准教授
渡辺先生
アラジンは介護保険始まった位から、約20年続いています。
2001年に家族支援に特化した形でNPOを作ったのが始まりなんです。ただ介護者支援はサービスが介護保険のサービスではないので、いろいろな行政委託による業務が軸になっています。人件費とか工夫しながらギリギリやっているというところす。本来は介護者支援事業でやった時に、介護報酬なり補助金が出るっていう形だともっと広がっていろんな事ができると思いますが、現状はみんな持ち出しでやっているので経済的にシビアです。
世界的にみると、介護者支援は当然のようにあります。不要な訳ではありません。日本の場合はどうするかっていうことですが、必要性が認められるまでに時間がかかるのかなって思います。
今回のコロナウイルス問題もケアラー支援連盟と協力して、緊急調査として、介護者の実態を報告しています。病院でも消毒液やマスク等が足りないのに医療的ケアを必要とする在宅でももっと足りない。優先的にいろんな医療用品とかを回してほしいというお願いをしています。
かいごのじかんスタッフ
かいごのじかん
ありがとうございます。
ちなみに、渡辺先生の周りで

面白い取り組みを行っている企業

があれば教えて頂きたいです。

渡辺 道代 准教授
渡辺先生
個人的に面白いと思っているのは、介護に関しては国内での人材がある意味底をついて来ているという点に注目した事業(活動)です。例えば海外の人材を入れて介護を支えてもらおうという議論があります。日本ってかなり条件が厳しいのであまり魅力的じゃないです。なかなか日本を選択してもらえない。
しかし、ワーキングホリデーを積極的に活用するなどをして、人材を確保しようとする試みもあります。例をあげると韓国とのワーキングホリデーで若い人材に1年間ワーキングホリデーで来てもらって介護現場で働いてもらう。日本の事を学びながら日本の魅力をわかってもらおうと活動している法人があります。住まいやお給料もそうですけど、いろんな事をセットにして保障すると大学生などの20歳代位の若い人が真面目に動いてくれて施設も戦力になる。介護という事をツールにして人材交流をしようっていうところもありますね。まだまだ始まったばかりです。
かいごのじかんスタッフ
かいごのじかん
介護の時間に来たユーザーさんが、「あ、いい情報が載ってるサイトだな」って思って頂きたいんですよね。

今後「かいごのじかん」で特集して欲しいの記事

はありますか?

渡辺 道代 准教授
渡辺先生
介護ロボットとはすごくいいテーマで、みんな関心を持っていて、どの程度使えるのって聞きたいと思っています。それ以外にも若い人をどう介護に引き付けるか。介護のフリーランスでやっている人達のようにいろいろな働き方も魅力で、フリーランスで行っている人の現状も知りたいと思っています。
また福祉系の学生達の就職活動で社会福祉法人のフェアがあって、そこで200近くの社会福祉法人とか出店するのですけど、法人ごとの差が分からないです。社会福祉法人のカラーと取り組みについては違いがよく分からない。今の福祉系の学生さんが何を求めているかというと、人間関係がいいとか、働きやすいとか、怖い上司がいないとか、みんなスタッフが優しいとかですね。人間関係がよくて働きやすくて、できれば土日休みたい(笑)っていうのが最近のトレンドです。ここの法人はこういうところが素敵ということがみえるといいですね。
かいごのじかんスタッフ
かいごのじかん
本日は貴重なお話、ありがとうございました!

NPO法人 介護者サポートネットワークセンター・アラジン

渡辺道代さんはアラジンの副理事も努めています。

アラジンは介護をしている家族を支援しているNPO法人です。私たちが社会貢献性が高いと思ったのが介護している家族の心を楽にしてあげること。介護している娘のみの介護サロンを開いたり、ヤングケアラー(若い人が介護をする)のみで集まったり。これは置かれている状況が種別によって全く違うため、細かく家族を集めて情報交換しながら、心のしこりを取っていくとっても社会貢献性の高いNPO法人だと思いました。

困っている、悩んでいる人がいらっしゃれば下記リンクから問合せてみてくださいね。

http://arajin-care.net/

取材まとめ

今回はコロナの影響もあり、WEB会議ツールを利用しての遠隔取材でした。当社としては初めての取材でしたが、多くのことを分かりやすく教えて頂けてとても貴重な経験となりました。家族支援の大切さを感じれたことも貴重な経験となり、「かいごのじかん」としてはもっと面白い多くの情報を配信しなければならないと使命感を感じれたことも渡辺先生に感謝致します。

私の親も介護で悩んでいる期間がありました。いまは施設に入ることができて落ち着いていますが、夜中に起こされたり、幻覚が見えると騒がれたりと介護側も潰れそうになったと聞いていました。家族でなんとか介護しようと頑張っていましたが、ストレスの限界が来たことと、お金が用意できたことで介護から開放されています。現在では1ヶ月に1度、施設に会いに行っていて前よりも友好な関係が気付けているとの事です。

当社が展開していく「かいごのじかん」は無料のWEB介護マガジンです。ですが営利団体として多くのユーザーを集めて介護で悩んでいる人のプラットフォームになっていく必要があります。見て頂いているユーザーに対してもっと有益な情報を揃えることが必要だと思っておりますので、今後の記事にも期待していただければと思います。