今回の対談も当社、西村の母校、東洋大学の准教授 八木 裕子 先生に介護の魅力について教えて頂きました。
所属 | ライフデザイン学部生活支援学科 |
専門分野 | 介護福祉学 |
著書 | よくわかるサービス提供責任者のお仕事入門(共著)[中央法規出版]
サクセスフルエイジングのための福祉(共著)[勁草書房] |
研修テーマ | 介護福祉実践におけるソーシャルワーク活用 介護福祉士教育のあり方 災害介護 |
目次
インタビュー
八木裕子 東洋大学ライフデザイン学部
生活支援学科
経歴
東洋大学准教授 2014年4月‐現在
広島国際大学講師 2010年4月‐2014年3月
広島国際大学助教 2008年10月‐2010年3月
かいごのじかん
八木先生
そこは社会福祉の学部しかなくて、安直な考えで入学してしまった自分は、特にビジョンを持っていたわけでもなく、将来のことはノープラン…。
将来のことを考えた時、介護の3K「きつい・汚い・くさい」というイメージが世間的にも自分的にもあって、介護の仕事は無理だと思ったので、良く分からない曖昧なイメージで将来は児童福祉司かなと思っていました。
現在、社会福祉士の実習は3年生の間で4週間やっていますが、当時は良くわかっていない1年生の夏休みに1週間、3年生で3週間と決まっていました。
当時自分が振り分けられた先が養護老人ホームと書いてあったのですが名前すら良く分からなくて…。老人というだけで凄く嫌だったのですが、その実習に行かないと社会福祉士の資格が取れないと言われて泣く泣く行きました。
介助が必要な特別養護老人ホームと違い、養護老人ホームは元気なお年寄りばかりで3Kのイメージで実習に行ったのに「汚くないじゃん!」って思いました。
その時に世間や学生が思ってるイメージに振り回されてると
身に染みて思いました。
実習も介護がいらないので、掃除して、お年寄りとおしゃべりをしてという内容。実習が終わる時には凄く寂しいという気持ちにさえなっていました。
1年生の春休みに軽い気持ちでデイサービスのバイトに行ったら、痴呆(現在の認知症)の方の担当で、食事の際に口の中に入れたものを飲み込むことさえ忘れてしまう痴呆性老人がいるということを知って、私は、怖い!というより、人って面白い!と思ってしまいました。
それをきっかけに3年生で高齢者介護の道に進むことを決め、高齢者福祉コースのゼミを選択して今に至っています。
かいごのじかん
介護以外にも様々な活動に取り組んでいるそうですが、
それらの
活動への原動力
はなんですか。
八木先生
介護という職業は人の暮らし、生活を支えるということ。
人の生活は多様性があり厚みがあります。自分と人の厚みは違うのが当然です。例えば、私が50年生きてきた中での暮らしの経験値と80年生きてきた人の経験値はすごく違うと思います。
学生に「利用者さんの立場に立つように」とよく言うけど、立場に立てる訳がないんです。障害者でも同じこと。
でも想像は出来る。想像する為にはたくさんの経験がないと分からないと思うので、特に学生には大学4年間にいろんな経験をしなさいと言っています。
分からなくても嫌でもとにかくやってみることが大切です。
かいごのじかん
災害支援
もされてますよね。
それもその一環としてでしょうか?
八木先生
災害等のニュースがあっても、テレビに映っている枠の横や後ろでは何が起こってるか分からない。だったら自分の目で確かめるしかないって思うタイプなので、災害の時に人々の暮らしがどうなっているのかということを知りたい。
知ってちゃんと学生に伝えたいというのもあるし、とにかく行ってみて自分が見たものを人にどう伝えるかを自分で判断することにしています。
かいごのじかん
これからの介護
はどうなると思いますか?
八木先生
2016年からこの3月までに介護福祉士になった人も1万人減っている状況です。
これからの介護は2025年問題。団塊の世代の人が75歳になった時に、38万人の介護職が足りなくなります。あと5年です。
例えば一人暮らしで家にヘルパーを呼びたくても行けるヘルパーがいませんとか。本当に介護が必要でも介護してもらえない未来が近いのです。
介護福祉士の減少は、自分達が介護をしてもらえない未来ということでもあります。世間の人はそれを分かっているのかなと思います。
「介護の仕事は3Kで…」という人もいますが、介護福祉士などの介護職の減少は、「(介護を受けたい時に受けられなくなってしまう)あなたの未来」ということです。
そして、高齢者の皆さんも「お上の世話になりたくない!」ではなく、介護保険制度をきちんと使って改善点や意見を出してほしいと思います。そうしないと、この制度は良くなっていかないのではないかと個人的には思います。
かいごのじかん
八木先生
でも、食事とか入浴、排泄といった介助があるおかげで普通の暮らしができて、生きてて良かったと思ってもらえるならやはり介助は必要なんです。ただ単に身の回りの世話だけ外国人にしてもらえばいいというのは違うと思います。
実際、日本人は「外国人やロボットができるでしょ」と多くの人が介護に見向きもしなくなっているけど自分達が介護が必要になった時、本当の介護が受けられなくなるということを分かった方がいいと思うんですよね。
介護ロボットの研究も進んでいますが何をロボットに求めていくかですね。
かいごのじかん
鉄の塊に触れられて介助されるのは少し抵抗もありますし…。
八木先生
かいごのじかん
フリーランスで働く人
が増えているという話がありますが、
そういう人を知っていますか?
八木先生
ヘルパーのバイトだと給料がいいので他の職業、特技と兼業することができるんですよ。
「調理師×介護福祉士」とか「美容師×介護福祉士」とか。
かいごのじかん
八木先生
かいごのじかん
ちゃんと稼げるというのは魅力的に思えますね。
介護の仕事を始める年齢
というのは決まっているのでしょうか?
八木先生
なので早くて18歳から。
でも20歳前後は自分の気持ちや考え方が変わっていくときなので、きちんとそれが養われた20歳を過ぎた専門学校や大学卒の介護福祉士が理想だと思います。
かいごのじかん
八木先生
よく保育士は早いうちにその仕事に就いた方がいいと言いますけど、介護福祉士はいつでも、どこでも働けると思うので。
中には80歳の利用者さんのおうちに70歳のヘルパーさんが行くこともあります。
30代40代はお子さんが手を離れた時に登録ヘルパーとか、
バイト感覚で1日3時間働く人は多いです。
直行直帰ができるので人気です。
かいごのじかん
増えたらいいなって思うんですけど、
施設で働く為に最低限必要なこと
はなんですか?
八木先生
勉強しないと虐待とかに繋がってしまう可能性も高くなると思いますし、技術はもちろん倫理的なところをわかった上で働いてほしいなって思ってます。
かいごのじかん
介護のことをよく知らない人は多い
んですかね。
八木先生
先日、社会保険労務士さんたちから相談を受けたのですが、彼らは成年後見もやっておられますが、最近多い内容として、本人や家族に代わってケアプランに印鑑を押したりされるのですが、実はケアプランの見方や施設の種類、違いがよくわかってないという社労士さんたちもおられるということでした。
これはとても危険なんです。
自分では何もできない、一人暮らしで身内もいないような人の為の成年後見制度なのに、成年後見人が理解していないまま事が進む状況なんてとっても怖いですし、それで幸せになれるわけがないですよね。
介護のことをこの際理解してみたいという方には、初任者研修を自分の親のために、介護の技術を知るために聞くっていうよりは正しい情報を自分が学ぶためのきっかけづくりとして使ってもらうとすごくいいと思います。
みんな同じように年を取って、自分でなくとも介護が必要な人が周りに出てきます。みんなが通る道です。
介護を考えることは私たちの未来を考えることであって絶対に必要な分野なんです。なのにみんな介護の話は避けたくて見て見ぬふりをします。そのせいで、ひとりぼっちで亡くなっていく方もいます。
そんなの悲しいじゃないですか。何のための福祉なんだ!ってなります。介護の面白さや介護を知ることが大切なんです。
かいごのじかん
実際やり出すと面白いと思うんですが。
八木先生
かいごのじかん
取材まとめ
今回もWEB会議ツールを利用しての遠隔取材でした。専門とされる分野によって物の見方、考え方が異なっていて渡辺先生とはまた違う視点で多くのことを考えさせられるとても貴重な経験となりました。八木先生ご自身も世間の持つ介護のイメージに振り回された経験があるとのことだったので、「かいごのじかん」を通じて人々がもっと介護を面白く、前向きなものとして捉えられるように多くの情報を発信していきたいと思いました。八木先生には心から感謝致します。
“もしも自分の親や兄弟が介護が必要になったら…”
こうしてあげたいと思うことはたくさんあると思います。それを叶えてあげられる未来を創る為に「介護」という誰しもが関わる可能性を持っている問題にきちんと目を向け、向き合うことが必要不可欠です。当サイトを通して、一人でも多くの人に介護と向き合う勇気を持っていただけるよう努めて参ります。
当社が展開していく「かいごのじかん」は無料のWEB介護マガジンです。ですが営利団体として多くのユーザーを集めて介護で悩んでいる人のプラットフォームになっていく必要があります。見て頂いているユーザーに対してもっと有益な情報を揃えることが必要だと思っておりますので、今後の記事にも期待していただければと思います。
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